『ずっとずっとGreen oasisに暮らす』8つの循環の詳述 [耐震+制震 編]

こんにちは。斉藤です。
「FPの家」についても取り上げている「からだにいい家のつくり方 (改訂版)」が発行しました。
タイトルの通り、住まいづくり(新築、リフォーム)をご検討されているかたに向けた教科書形式の内容となっています。
・室内空気、結露、温度など住宅の性能によってからだにストレスを軽減させる優しい住まいづくり。
・間取りの工夫による家事ラク、居心地の良い空間、便利な収納計画。
・万が一の災害にも安全な家づくり。
など、「FPの家」でなくても住宅をご検討される上で知ると知らないとでは、将来住んでからの差が表れることばかりです。このGWの期間に予習はいかがでしょうか(「アマゾン」からご購入可能です)。
さて、今回のブログは、『ずっとずっとGreen oasisに暮らす』を生む8つの循環の詳述 [耐震+制震 編]になります。
HPでは8つの循環についてご紹介しておりますが、実はそれぞれの原文を抜粋して載せていました。
今回、ブログに載せようと思い立った理由は、これまで開発経緯、コンセプト、間取り、性能など『SaiCLE』の主軸となる内容を一通り綴り終えたためです。
そのため、8つの循環について載せきれなかった内容を綴れるタイミングと思いました。これにより『SaiCLE』の誕生をよりご理解いただけましたら幸いです。
1. 耐震性能
許容応力度計算による耐震等級3 + 制振装置
[『SaiCLE』は許容応力度計算による耐震等級3]
何代も渡り住まうことができる家づくりを弊社は「Mission」に掲げています。いつ起こるか分からない大地震、大きな余震を将来何度か経験するかもしれません。「SaiCLE」は、その度に家族の安全を守り、家族が安心して住み続けられる耐震性能として「許容応力度計算による耐震等級3」を選択しました。
また気密性能は経年よって一般的には年間0.5%から2%程度少しずつ低下します。これに加えて大地震が発生した場合、建物が大きく揺らされることで更に低下してしまう可能性があるのです。そのためにも耐震性能を高くして揺れを抑え、気密性能の低下も極力抑えなければならないと考えます。
[耐震基準と変遷]
建物の耐震基準は戦後の建築基準法制定(1950年)から大地震が起きるたびに改正が行われ耐震基準の見直しがされてきました。現在は改正5回目の2025年基準になっています。基礎の検討、耐力壁の配置(4分割法)、接合の計算(N値計算)が「仕様規定」により耐震強度が当時に比べで大きく向上しています。
しかし、建築基準法の「仕様規定とは最低限のルール」のため、耐震性能は最低基準の「耐震等級1」になります。加えて建物の状態や地盤にもよりますが、築年数を重ねた建物ほど大地震によって倒壊、崩壊する危険性が高まる恐れがあります。
[住宅における平屋、2階建て木造軸組み構造の耐震等級と計算方法]
建物の計算方法が3種類あり構造安全性レベルによって分かれています。
「仕様規定」→「住宅性能表示計算」→「許容応力度計算」
の順に構造安全レベルが高くなり検討が複雑になります。
「耐震等級」は、等級が高いほど耐震性能が高くなります。それぞれの計算方法ごとに耐震等級を定めていますが、同じ耐震等級でも耐震性能が異なるため混同に注意が必要です。
※画像出典元:株式会社 M’s構造設計(構造塾)
仕様規定とは:
階数2以下かつ延べ床面積500㎡以下(最高軒高9m以下、最高高さ13m以下)の平屋、2階建て木造軸組み構造に対して、壁量計算、耐力壁の配置バランス(4分割法)、柱頭柱脚接合方法(N値計算)による3つの簡易計算と定められた8つの仕様を必ず守る最小限のルールとなります。
仕様規定による「耐震等級1」計算方法:
仕様規定には「耐震等級1」しかありません。震度5強程度の地震に対して「損傷」を生じない程度。震度6強から7程度の1度の地震に対して「倒壊、崩壊」しない程度の強度であり、倒壊、崩壊に至らなかったとしても建物が傾いてしまう可能性があります。また余震の倒壊、崩壊の危険性から家での生活を継続できず、住む場所を失うことになりかねません。あくまで大地震から1度だけ家族の命を守る耐震性能です。
・補足
仕様規定に「耐震等級2」、「耐震等級3」の明示はありません。また、壁量を1.5倍に増やしても「耐震等級3」とはなりません(3相当になる)。
性能表示基準とは:
品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の中に「住宅性能表示制度」が定められています。この制度は、第三者機関が住宅性能を客観的に評価して表示する制度です。10分野(全33項目)から対象を評価します。その1分野である耐震性能の規定に基づいた計算です(長期優良住宅申請に適用)。
・補足
住宅性能表示制度 構造の安定について
リンク: 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
性能表示基準による「耐震等級2」、「耐震等級3」計算方法:
仕様規定に加えて性能表示基準による、満たす必要のある存在壁量・床倍率と各種接合部の倍率検討を行います。基礎、横架材の強度はスパン表を基に検討を行いますが、建築する建物の荷重(重さ)を把握できないため建物の荷重に地盤(土地)が耐えられるのか判断が難しくなります。
許容応力度計算とは:
構造計算とも呼び、階数3以上または延床面積500㎡超、最高軒高9m以下、最高高さ13m以下の建物に定める計算方法を適用します。使用される木材が構造的に安全であることを確認するために耐力がどの程度あるかを計算します。
許容応力度計算による「耐震等級1」、「耐震等級2(1.25倍)」、「耐震等級3(1.5倍)」計算方法:
基礎、構造材、屋根、外壁、内装、断熱材、サッシ、居住者、家具等全ての固定荷重を求めることで建物の重さが分かるため、地盤(土地)が耐えられるのか判断の一つとして情報を得ることができます。構造においては、屋根垂木、柱、梁それぞれ1本1本に掛かる荷重を正確に計算することで適した部材寸法を検討します。また地震力、地域特性の風圧力(台風等)により満たす必要のある存在壁量を検討、そして基礎検討も行います。これらを一つひとつ確認するため、建物の安全性が高まるのです。
・補足
計算を通じて最適な材料を選定するため、効率的かつ経済的なコストダウンにもつながります
。
耐震性能による耐震等級
※画像出典元:株式会社 M’s構造設計(構造塾)
各計算方法による耐震比較
※画像出典元:株式会社 M’s構造設計(構造塾)
計算方法別 計算内容一覧
※画像出典元:株式会社 M’s構造設計(構造塾)
[熊本地震における耐震等級別の損傷]
下の表は2016年に発生した熊本地震における木造住宅の建築時期別の損傷比率です。熊本地震は熊本地方で4月14日マグニチュード 6.5、4月16日マグニチュード7.3 と非常に大きな地震が2度も発生し、且つ大きな余震も多く起こりました。
耐震等級3の住宅被害に着目すると「半壊または軽微が2棟、14棟が無被害」です。その後も住み続けられていますので、耐震性能の重要性が分かります。
・補足
耐震等級3は、性能表示基準、許容応力度計算の木造住宅双方が含まれています。
※画像出典元:株式会社 M’s構造設計(構造塾)
[耐震性の高いFPパネル]
断熱材に使用する「FPパネル(壁)」はただの断熱材ではありません。筋交いと木枠を組み合わせ、木枠内に高圧で硬質ウレタンを充填することで一体成型しています。木枠、筋交い、硬質ウレタンが合わさった厚さ105mm、120mmの強固なパネルを躯体に組み込む(柱と柱の間)ことにより、壁構造そのものになっています。そのため、一般的な筋交い工法より強い剛性を備えた建物となるのです。
※画像出典:株式会社FPコーポレーション
リンク:FPの家
[「SaiCLE」は速度依存型オイルダンパーを採用]
耐震性能を高めることは重要ですが、その性能を維持させることも重要です。将来、「SaiCLE」が大地震や大きな余震を何度も経験するかもしれません。その度に構造は少しずつ耐震性能が低下していくと考えます。
また、共振による増幅、気密性能の低下、内外装材のクラック、設備配管へのダメージ、揺れによる恐怖感など、揺れを極力抑えなければなりません。そのために柔軟に機能する速度依存型オイルダンパーを「SaiCLE」は採用しました。
[採用したオイルダンパーの特性と特徴]
制振装置は、構造用合板や筋交いが傷み始めるまでの僅かな変形角でどれだけ減衰力を発揮するかで性能の良し悪しが決まります。筋交いは、1/90rad(0・6度)という僅かな変形から傷み始めます。採用したオイルダンパーは、約0.1°という微細な変形から性能を発揮します(バイリニア特性)。
特徴:
・地震の衝撃力を約50%低減(吸収)
・オイルダンパー最上級の減衰力
・純国産品
・長期60年の耐久性(20年保証)
地震発生時の僅かな揺れから大きな揺れまで建物に掛かる加速度(衝撃力及び最大速度)を
下げ、建物の変形を抑えます。
※画像出典:株式会社プロジット
リンク: 次世代制振装置「ウィンダンパー」株式会社プロジット
制振装置は家族と住宅そのものに大きく影響される装置です。大切な家族と家の安心と安全のためにこのような特性を備えた加速度依存型のオイルダンパーを採用しています。
[木造住宅の制振装置ついて]
木造住宅に採用される制振装置は、地震の揺れを軽減し、建物のダメージを抑えるための装置です。構造躯体内に特殊なダンパー等を取り付けることにより、地震のエネルギーを効果的に吸収または分散します。地震対策の一環として制振装置が注目されています。
構造体の保護:
構造への負荷を減少することができます。損傷を最小限に抑え、建物の耐久性を持続させます。また家具や家電の転倒を防ぎ、窓ガラスや壁の損傷も最小限に抑えることができます。家族の不安や恐怖を軽減し、日常生活においても心理的な安心感につながります。
・共振
建物の固有周期と地震の揺れの周期が一致すると、建物の揺れが増幅される現象です。木造住宅は含む0.4秒から1秒の範囲の揺れに対して共振する可能性があり、共振現象が起こると激しい揺れに襲われ木造建物で被害が大きくなるといわれます。
・補足
耐震等級3の木造建物の固有周期は概ね0.10~0.15秒程度といわれます。
気密性能の保護:
構造の捻じれや変形を最小限に抑えることができるため、気密性能の低下を極力抑えることができます。
[主な制振装置の種類]
速度依存型の制振装置:
地震の発生に伴う速度変化に応じて作用するタイプの装置です。建物は地震の揺れで速度変化が起こり、その変化に応じて振動を抑制します。主にオイルダンパーがあります。地震の際に建物が揺れると、速度の増減に応じて減衰力を発生させて建物の揺れを制御・吸収します。この効果によって安定性や耐震性を向上させ、被害を最小限に抑えることができます。そのため重要な構造を守る装置として広く普及しています。
速度依存型オイルダンパーの特徴:
速度の変化に応じてシリンダー内のオイル流れを調整し振動を減衰させます。オイルの圧縮によって振動を吸収するため、緩やかな減衰が特性です。振動を滑らかに制御することができます。
変位依存型の制振装置:
地震時に建物が受ける変位(ズレ)に応じて作用するタイプの装置です。主に金属製ダンパーがあります。地震が発生すると建物に変位が生じます。この変位に対応して反力を発生させて建物の振動を抑制します。また、建物が大きく変位すると制振機能が作用し、建物の振動を減衰・吸収させ倒壊や構造への損傷を防ぎます。速度依存型と比べて建物の変位に直接対応することで効果的な制振を発揮します。建物の安定性や耐震性を高めるためには適切な計画が大切です。
変位依存型金属製ダンパーの特徴
鋼やアルミニウム合金などが使用されます。高い強度と耐久性を備え、耐食性にも優れています。建物の変位が一定の範囲内に収まるように設計されており、比較的低コストで取り付けることができます。柔軟な計画が可能で耐震性を向上させることが特徴です。
以上のことから『SaiCLE』は家族と地球の未来のために、
許容応力度計算による耐震等級3 + 制振装置を採用しました。
長文のご一読ありがとうございました。次回は、「断熱性能」の詳述となります。
どうぞよろしくお願いいたします。
茨城県筑西市の高気密高断熱工務店 斉藤建築工業